海運産業に省エネルギーの文化をどう築くか

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海運業界がフリートパフォーマンスを高めるためにデータに基づく方法を採用したのは、まだごく最近のことです。 さらに、国際海事機関(IMO)は、海事活動の環境フットプリントを削減し、それによって競争力を強める目的で、長期戦略を少しずつ導入してきました。 したがって、海運業界は、競争に参加するのであれば、業界全体に省エネルギーの文化を醸成し定着させなければなりません。

既存の障壁を壊す

ずっと続いてきた考え方を変えることは非常に困難なことかもしれません。新しい技術を使い慣れた者と変化を好まない者の間に情報格差がある業界では特にそうでしょう。 典型的な例が、市場志向で、その行動が運賃収入に左右される「伝統的な」船主です。 したがって、たとえば、貨物市場が不況のときに、投資利益率がどれだけあっても、質の高い最新の汚染防止塗料に投資するよう彼らを説得するのはほとんど不可能です。 とはいえ、すべての省エネルギー対策の継続的な検証は必要になります。 その負担は、自分たちが講じる措置の一つひとつが最終的に実を結ぶことを証明しなければならないパフォーマンス関連の企業や技術者にかかります。

疑いなく、これがパフォーマンス関連の技術者が直面している現実です。 省エネルギーに投資することが決められるのは経営陣やオーナーだけなので、開発した複雑なモデルは、専門的ではなく平易な言葉で彼らに説明する必要があります。 そうでなければ、経営陣は、推進改善装置や高品質の最新汚染防止塗料といった選択肢は考慮したりしないでしょうし、何よりも、毎日のフリートや船舶のパフォーマンスを気にかけることもないでしょう。

海運産業内に省エネルギーの文化を築く

メリットを明確に率直に伝える必要があります。 当然、これは易しいことではありません。 まず、正確さを絶えず証明することで、その手順とモデルに対する信頼を得るところから始めなければなりません。 これは、リサーチ、実験、予測、フリート内、特に姉妹船間の比較など、いろいろなやり方でできます。 すべてのプロセスには、継続的な検証はもちろん、利害関係者が関心を持ち続けるよう強力な財政的インセンティブが必要です。

乗組員の支持を得る

海運産業で省エネルギーを実現するために次に重要な役割を担うのは当然船舶です。 乗組員の支持がなければ、これらの行動はすべて無駄に終わります。 たとえば、無関心な乗組員は、燃料消費量を削減するために、清浄器を止めたり、ジャケット温度を下げたり、燃料タンクを熱を発するものから隔離したり、船が動いていないときにボイラーの始動停止圧力閾値を調整したり(常になんらかの状況下にあります)することはないでしょう。 乗組員の間に省エネルギーの文化を築くのは大変な仕事です。ほとんどの場合、省エネのための行動は安全とは逆で仕事を増やすだけの行動だと思われるかもしれません。そして、それは両方とも乗組員がとても嫌うことです。 この難題の唯一の解決策は、セミナーやワークショップを行なうとともに、乗組員に指導、説明を繰り返すことでこの文化を育てることです。 したがって、乗組員がそのプロセスを支持するようにするため、管理部門はできるだけ乗組員の仕事量を全般的に減らす必要があります。 言い換えれば、省エネルギーと安全性は共存できるということです。

そのための方法として2つの顕著な例があります:

  • ルートの最適化:最新気象データを用いて船舶のルートを継続的に最適化するモデルを使う場合は、エネルギー効率を最大化するために運航経費が少し余計にかかるかもしれません。
  • 補助エンジン:ある閾値で2台目のディーゼル発電機を始動するようにするのは、各機関長の主観の問題になります。

上の例は、船会社でよく見られることで、エネルギー効率を確実に高めることができますが、手つかずになっている場合が少なくありません。 この種の問題の解決には、管理部門が乗組員と協力し、この考え方が取り入れられるよう乗組員を説得する必要があります。そうすることで、だんだんに植え付けていって最終的に省エネルギーの文化を築くことができます。 人は習慣にしたがう傾向があるので、単なるコンプライアンスを超えて、そのような計画を確実に実施する必要があるのは言うまでもありません。 この傾向を変えて省エネルギーの習慣がつくれるかどうかは、わたしたち全員の意志と努力にかかっています。

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Athenian Sea Carriersのエナジーエフィシェンシー&フリートパフォーマンスエンジニア、クリストス・パパンドレウ

Athenian Sea Carriersのエナジーエフィシェンシー&フリートパフォーマンスエンジニア、クリストス・パパンドレウによるゲスト記事

クリストス・パパンドレウは、Athenian Sea Carriersのエナジーエフィシェンシー&フリートパフォーマンスエンジニアです。 パパンドレウは、アテネ工科大学で造船工学及び船舶工学の修士号を取得しました(2013年)。 フリートパファーマンス分野で7年以上の経験があり、運航および技術の効率化とエネルギー管理に関する会社の目標達成を助けるのが責務です。 AI・データによる新旧両方の方法での船舶パフォーマンス監視プロジェクトに数多く参加してきました。