• AI & Data

海運におけるAI:課題と機会

  • Knowledge Hub
  • Digital Transformation
  • Innovation

DeepSeaのAI研究ディレクター、Antonis NikitakisとのQ&A

Q:現時点で最もエキサイティングなAI研究は何ですか?

AIシステムにおいてその信頼を構築するには、説明可能性が重要です。 そこで、当社の最もエキサイティングなAI研究には、予測モデルの説明可能性を改善する方法の研究も含まれ、これが上手く行けば、利害関係者の間でこれまで以上に大きな信頼を構築することが可能になります。 AIは、「ブラックボックス」と見做されがちですが、特に複雑なアルゴリズムやディープラーニングモデルに基づいて動作している場合、その入力と内部の動作は不透明で、部外者には理解しがたいものだからでしょう。 AIは、偏ったデータセットを基に学習している場合や倫理的な懸念事項に十分な配慮を払わずに設計されている場合、偏見や差別に対して脆弱性を呈する場合があります。 このような脆弱性は、システムの精度や信頼性に関する懸念を招き、使用する際の信頼感や自信が損なわれる可能性があります。

信頼を取り戻すことができる最も有望な方法の一つは、システムが下した決定の背後にあるロジックを人間が理解できるようにするモデルや方法を実用化することです。 DeepSeaでは、物理学と海軍工学の概念と原理を統合したモデルの研究を行っています。 これにより、モデルがどのように動作するのか、そして判断には常に自然原理が優先されることを説明できるようになります。 加えて、我々は、外挿領域(与えられた学習データの分布範囲外)におけるAIモデルの性能評価のために新たな方法や基準を取り入れることで説明可能性を強化しようとしています。 利用可能なデータの量と質に関係なく、性能評価のための信頼できるアプローチを手に入れることは、説明可能性の向上に向けての大きな一歩となります。

Q:AIは、海運業界の市場勢力図をどのように変えていますか? AIは、早期導入者にどのようなメリットを提供できますか?

AIは、船舶固有のウェザールーティングを用いて、運航の最適化と効率の向上から意思決定能力の改善に至るまで、様々な方法で海運業界を変革しています。 従って、AIが早期導入者に提供するメリットは大変大きいと言えます。 当社は、ワレニウス・ウィルヘルムセンとの協業でAIがもたらす主だった効果を既に目にしてきました その車両輸送船の運用会社は、DeepSeaのパフォーマンスルーティング技術を活用して、完全AIベースの運用最適化アプローチを初めて採用した世界有数の海運会社となりました。 ワレニウス・ウィルヘルムセンは、早期導入者として、燃料の節約や環境への影響低減といった定量化できる恩恵を既に享受するようになりました。

また、AIは、早期導入者に対して、不要な費用の発生を招く人為的ミスのリスクを軽減し、保守および運用の効率を改善する優れた意思決定能力も提供可能です。 例えば、DeepSeaのCassandraを使用すると、船舶の現在の船体汚染の状態と今後の汚染の傾向を非常に正確に推定できるため、運用チームが最適な洗浄計画を立案する手助けとなります。

Q:海運業界では、どのような種類のデータがAIによって収集、分析されるのですか?

今日では、非常に大量のデータが収集されています。 収集されるデータは、船舶に搭載したセンサーからの様々なセンサーデータであり、船体やメインエンジン、電子海図表示装置(ECDIS)、および発電機関など船舶の全ての主要な機械類やサブシステムに関するデータです。 このデータの情報は、船舶の航路を最適化し、メンテナンスが必要となる時期を予測し、さらに各船舶が最大効率で運航されていることを確認するために重要です。 次に、気象データがあります。このデータは、船と乗組員の安全を確保する上で極めて重要です。 気象データには、センサーから送信されるライブの気象データと、第三者のプロバイダーから収集される気象予報データおよび気象履歴データがあります。 さらに、他にも、手動で報告される運用データ(例えば、ヌーンレポート)、および他の船舶がこちらの位置を認識できるように船舶の位置情報を送信する役割を担う船舶自動識別装置(AIS)からのライブと履歴データなどがあります。 当社は、これら全ての種類のデータを分析し、実際の運用に有効な洞察に変えることで、海運会社が、保有するフリートのパフォーマンスを最適化し、運航効率を改善し、燃料費を節約し、そしてカーボンフットプリントを削減することに貢献します

Q:AIを実装する際の課題にはどのようなものがありますか?

今日のAIの実装における課題の多くには、データに関連する課題やモデルの評価とその堅牢性に関連する課題が含まれますが、先刻述べた利害関係者の信頼性の問題もあります。 主要課題の一つは、分布シフトの問題です。 端的に言えば、分布シフトによって、同じAIモデルであっても、トレーニング環境で実装されたAIモデルと実際の船舶の現場で実装されたAIモデルの間では、AIモデルの中にミスマッチが発生し得るということです。 この「シフトされた」データは、機械学習モデルにとって厄介なものになる可能性があります。 例えば、海運には、船体汚染という顕著な「潜在的現象」があります。 船体汚染の状態は、動的現象であり、一般的なモデルでは、データを追従させることができません。 センサーの校正不良によるデータの変動も分布シフトにつながる可能性があります。 船舶のデータセット全体にわたって、その一貫した適合性を確実にするためには、特別な検討と方法を考慮する必要があります。 DeepSeaは、そのような問題が起こりそうになると検知機能が働く高度なデータ駆動型の教師なし異常検知方法を開発しました。

Q:海運業界でのAi利用に関連して、倫理的検討事項や潜在リスクはありますか? どのように対処すればよいのですか?

AIをベースとする全ての意思決定支援システムの場合、AIが推奨するアクションに基礎となるモデルによる偏見が加えられていないか、常に懸念はあります。 ディープラーニングの時代には、そのような偏見がデータのどの部分から生じたのか、或いはどのように偏見を修正するかが明らかになることはありませんが、偏見をデータから直接導き出すことは可能です。 DeepSeaでは、モデルの解釈可能性を改善し、モデルの全体的な不偏性を測定して保証するために、多面的な取り組みによってこのような問題を軽減しようとしています。 モデルの堅牢性を高める方法に興味がありましたら、当社の「海運における現実世界でのAIの有効性の判定法」に関する論文をご覧ください。